報恩講とは?浄土真宗で最も大切な法要の意味と時期・服装・お布施を解説

お寺から「報恩講」の案内が届いたものの、どのような法要なのか分からず、準備に戸惑っていませんか。報恩講とは、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人のご恩に報い、その教えを改めて味わうための、浄土真宗において最も大切とされる法要です。
故人を偲ぶ一般的な追善供養の法要とは性質が異なるため、参拝にあたっては、正しい意味とマナーを押さえておく必要があります。今回は、報恩講の由来や営まれる時期、参拝時の服装、お布施の考え方まで、初めての方にも分かりやすくお話しいたします。
報恩講とは|親鸞聖人のご恩に報いる、浄土真宗で最も大切な法要
案内状に「報恩講」とだけ書かれていても、何を勤める法要なのかは伝わってきません。言葉の成り立ちからほどいていくと、その性格がはっきりします。
報恩講の読み方と、「講」が意味するもの
報恩講は「ほうおんこう」と読みます。
「講」という言葉には、仏教の教えを聴くための集まりや、法要を執り行う集まりという意味があります。つまり報恩講とは、仏さまや先人のご恩に感謝を捧げ、ともに教えを聴くために人々が集う法要を指しています。「報恩講について|真宗大谷派(東本願寺)」によると、親鸞聖人の三十三回忌にあたって第三代覚如上人が『報恩講私記』という式文を著し、法要の次第が調えられました。その源をたずねると、「報恩講とはどんな行事ですか?|真宗大谷派(東本願寺)真宗会館」が示すように、親鸞聖人ご自身が師である法然上人のご命日に人々と寄り合い、仏法を聴き、お勤めをし、語り合っておられたことにさかのぼります。
誰の、どのような「恩」に報いるのか
報恩講は、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人のご恩に感謝を表す法要です。「報恩講とは|真宗大谷派(東本願寺)」によると、報恩講は「お念仏が届けられていることに報謝し、親鸞聖人が伝えてくださった教えを聞いていくことを確かめる、浄土真宗では最も大切な仏事」と位置づけられています。親鸞聖人が生涯をかけて明らかにし、伝えてくださった阿弥陀仏の救いの教えに出会えた喜びを、改めてかみしめる場でもあります。この「恩」については、親鸞聖人の和讃に「如来大悲の恩徳は 身を粉にしても報ずべし 師主知識の恩徳も 骨をくだきても謝すべし」とあり、「恩徳讃(おんどくさん)」として報恩講でも勤められます。
故人を供養するための法要ではない

報恩講は、亡くなった家族や先祖を供養するための「追善供養」の法要ではありません。「よくあるご質問|浄土真宗本願寺派(西本願寺)」によると、「しかし、浄土真宗の味わいでは、亡き人は阿弥陀仏の救いによってすでに浄土に生まれ、仏さまになっておられます。ということは、こちらから善を振り向ける必要はないのです。法事はあくまで、参拝者一人ひとりが「私のために」仏法を聞く仏教行事なのです」と示されています。
そのため、報恩講は故人を成仏させるために営むのではなく、生きている私たちが仏法を聞き、感謝を捧げるための法要として執り行われます。
報恩講はいつ勤められる?本山・お寺・ご家庭で異なる三つの時期

報恩講の日程を調べると、1月と書かれた記事もあれば11月と書かれた記事もあり、どちらが正しいのか迷います。これはどちらも正しく、浄土真宗のどの派か、そして本山・お寺・家庭のどこで勤めるかによって時期が分かれているためです。「報恩講|宗教部|龍谷大学」によると、親鸞聖人の御祥月命日は旧暦の11月28日、新暦では1月16日にあたります。1月と11月という二つの日付は、どちらも同じこの命日を指しています。
浄土真宗本願寺派(西本願寺)の御正忌報恩講は1月9日から16日
報恩講が営まれる時期は、本山やお寺、ご家庭によってそれぞれ異なります。「報恩講とは ~特集記事~|浄土真宗本願寺派(西本願寺)」によると、本山本願寺においては、親鸞聖人の祥月命日にお勤めすることから「御正忌報恩講(ごしょうきほうおんこう)」と呼ばれます。日程は、毎年1月9日から16日までお勤めされます。
真宗大谷派(東本願寺)の報恩講は11月21日から28日
真宗大谷派の本山である真宗本廟(東本願寺)では、異なる日程で営まれます。報恩講とは|真宗大谷派(東本願寺)によると、東本願寺の本山では、毎年11月21日から28日までの七昼夜にわたって法要が営まれます。期間中は「逮夜」「晨朝」「日中」の法要が毎日勤まります。なお、浄土真宗は十派に分かれており、「各派の御正忌報恩講|真宗教団連合」がまとめている日程では、1月9日から16日に勤めるのは本願寺派と高田派で、大谷派を含むそのほかの派は11月21日から28日を中心に勤めています。
一般のお寺で勤める「お取り越し」「お引上げ」
本山以外の全国にある一般の寺院でも、年に一度、報恩講がお勤めされます。報恩講とは ~特集記事~|浄土真宗本願寺派(西本願寺)によると、本山の報恩講と同じ期日にお勤めする寺院では「御正忌」と呼ばれます。一方で、本山の法要に先立ち、9月から1月上旬頃にかけてお勤めする寺院では「お引き上げ」や「お取り越し」と呼ぶことが多いようです。また、地域によっては「ほんこさん」と呼んで親しまれています。
ご家庭で勤める報恩講の時期
報恩講はお寺で勤められるだけでなく、古くからご門徒の家庭でもお勤めされてきました。家庭の報恩講は、所属しているお寺(お手次寺)で報恩講が勤められる前後の時期に、僧侶を自宅に招いて執り行われることが多く見られます。お寺の年間行事の予定を確認し、相談しながら日程を決めます。
報恩講では何をするのか|お勤めの流れとお斎
日程が分かると、当日どのように進むのかが気になります。報恩講は、読経と法話、そして食事という三つの要素で組み立てられています。
正信偈をはじめとするお勤め
報恩講の法要では、親鸞聖人が著された「正信偈(しょうしんげ)」や「和讃(わさん)」などが読経されます。
「版本 三帖和讃並正信念仏偈|石川県(県指定文化財)」によると、本願寺派において、従来勤行に使用されていた「六時礼讃」にかわって、正信偈・和讃を諷誦するように改めたのは蓮如上人とされています。なお、法要で読まれる浄土真宗のお経の詳しい歴史や意味については、別の記事で詳しく紹介しています。
法話を聴くことが報恩講の中心にある
報恩講において、読経と同じく極めて重要な時間が、僧侶による「法話(ほうわ)」を聴くことです。報恩講とは|真宗大谷派(東本願寺)によると、「法要にお参りし、法話を聞く。これが報恩講への参拝の基本です」と説明されています。親鸞聖人の教えを通じて、現代を生きる私たちがどのように仏法を受け止めていくかを学ぶ時間になります。
親鸞聖人のご生涯にふれる『御伝鈔』と『御絵伝』
報恩講には、日ごろのお勤めでは触れることの少ない場面があります。真宗大谷派の本山や別院の報恩講では、親鸞聖人のご生涯をつづった『御伝鈔(ごでんしょう)』が拝読されます。また、聖人の生涯を描いた『御絵伝(ごえでん)』を掛け、絵解きの法話とともに拝観する場も設けられます。正信偈のお勤めは日々のお内仏でも行いますが、これらは報恩講ならではの時間です。
お斎(おとき)と報恩講料理
法要の前後や合間には、「お斎(おとき)」と呼ばれる食事が振る舞われることがあります。お斎は、仏事の際に参拝者一同でいただく伝統的な精進料理です。報恩講で出されるお斎は「報恩講料理」とも呼ばれ、地域ごとに受け継がれてきた献立があります。
報恩講に参列するときの服装・持ち物と作法
参列を決めたあとに迷うのが、服装と持ち物です。葬儀ほど格式ばらない場だからこそ、かえって判断に困ることがあります。
ふさわしい服装と、避けたい装い
お寺の報恩講に参拝する際は、基本的には落ち着いた平服(略装)で問題ありません。
男性であれば落ち着いた色のスーツやジャケット、女性であれば地味な色のアンサンブルやワンピースなどがふさわしいでしょう。ただし、過度に華美な服装や、殺生を連想させる毛皮・革製品などの着用は避けるのがマナーです。
念珠(数珠)の持ち方と焼香の作法
報恩講における焼香や念珠の作法は、葬儀や法事の際のマナーと共通しています。よくあるご質問|浄土真宗本願寺派(西本願寺)によると、本願寺派では「お香はおしいただかない」「回数は一回」とされています。
西栄寺の法要でも、焼香は1回で、額の前に持ち上げる行為は行いません。数珠(念珠)は房を下にたらして左手で持ち、合掌の時は両手にかけ、親指で軽く上から押さえます。珠をこすり合わせて音を出したり、手のひらの中で握りしめたりはしません。
焼香の回数は宗派によって異なります。手順の詳細は、葬儀の参列マナーを解説した記事でご紹介しています。
当日に持っていくもの
お寺の報恩講に参拝する際は、以下の持ち物を準備しておきましょう。
- 念珠(数珠)
- お布施
- 筆記用具(法話のメモ用など)
念珠は仏前で合掌する際に用いるもので、参拝の基本の持ち物です。お布施を持参する場合は、袱紗(ふくさ)に包んでおくと丁寧です。
報恩講のお布施はどう考えるか|決まった相場がない理由と表書き
参列の準備でとりわけ迷いやすいのが、お布施をいくら包むかという問いです。答えから先に言えば、決まった相場はありません。
お布施は読経の対価ではない
報恩講の際にお寺へお渡しするお布施は、僧侶の読経や労働に対する「対価」ではありません。
お布施は、阿弥陀さまへの感謝を表すお供えであり、お寺の護持や仏法を広める活動を支えるためのものです。そのため、一律の「料金」として決まっているものではありません。
金額に迷ったときのお寺への尋ね方
お布施の金額に決まりはないため、いくら包めばよいか迷ってしまうことも少なくありません。金額に迷う場合は、お寺に遠慮なく相談して差し支えありません。お布施の額はお寺との付き合いの深さや地域の慣習によっても変わるため、直接尋ねるのが結局は確実です。
表書きは「御布施」、「御霊前」は用いない
お布施を包む封筒の表書きには、注意が必要です。よくあるご質問|浄土真宗本願寺派(西本願寺)によると、葬儀や法事など喪主(施主)が僧侶に差し出す金封には「御布施」と書かれることが多いようです。この「御布施」は、お寺の御本尊・阿弥陀さまにお供えするためのものです。僧侶に渡す金封で、「御布施」以外の、「御礼」「御経料」「回向料」などは趣旨から言って、ふさわしくありません。また、亡くなった方を供養する趣旨ではないため、「御霊前」という表書きも使用しません。
なお、封筒の選び方やお札の入れ方、裏書きの書き方など、浄土真宗のお布施の書き方の詳細については、別の記事で詳しく解説しています。
ご家庭で報恩講を営むには
お寺の報恩講に参るほかに、僧侶を自宅に招いて勤める形もあります。報恩講とは ~特集記事~|浄土真宗本願寺派(西本願寺)によると、地方によっては「親の法事はもちろん大切だけど、報恩講はさらに大切」とまでいわれるほど、家庭の報恩講は受け継がれてきました。準備といっても、特別に難しいことはありません。
お内仏(お仏壇)のお給仕とお飾り
自宅で報恩講を営む際は、事前にお仏壇(お内仏)を綺麗に掃除しておきます。報恩講の際は、普段のお給仕よりも丁寧にお飾り(お荘厳)を整えるのが習わしです。浄土真宗では法要にあたって、お仏壇に「打敷(うちしき)」と呼ばれる布を掛けます。また「お盆の紹介(特集記事)|浄土真宗本願寺派(西本願寺)」によると、本願寺派では蠟燭を目的によって使い分けており、報恩講には朱色の蠟燭を用います(一般の法要は白)。そのほかの具体的なお飾りは地域やお寺によって異なりますので、お手次のお寺に尋ねてから準備すると確実です。
お寺に来ていただく場合の段取り
自宅に僧侶を招いて報恩講を執り行う場合は、早めに段取りを進めます。まずはお寺に連絡し、法要の日程を調整します。当日はお仏壇のお飾りを整え、お布施を用意して僧侶をお迎えします。法要後には、僧侶とともに法話をいただいたり、お茶やお斎を囲んで懇談したりする時間を設けるのが一般的です。
報恩講に関するよくある質問
報恩講について、参列前によく尋ねられる質問をまとめました。
報恩講のお布施の相場はいくらですか?
報恩講のお布施に決まった金額の相場はありません。お布施は読経の対価ではなく、阿弥陀さまへの感謝のお供えであるためです。どうしても金額に迷う場合は、お寺に直接尋ねて差し支えありません。
報恩講は浄土真宗だけの行事ですか?
はい、報恩講は浄土真宗特有の法要です。浄土真宗の宗祖である親鸞聖人のご恩に報い、その教えを仰ぐための行事であるため、他の宗派では営まれません。浄土真宗において、年間を通じて最も重要視される仏事となっています。
報恩講は年に何回ありますか?
報恩講は、年に1回執り行われます。親鸞聖人の祥月命日の前後に合わせて、本山やお寺、各家庭でそれぞれ年に一度、時期をずらして勤められます。
報恩講は自宅でも行うのですか?
はい、自宅でも行うことができます。家庭で営む報恩講では、お仏壇を丁寧にお飾りし、お寺の僧侶を招いてお経をあげていただきます。現代の生活様式に合わせて、簡略化した形でお勤めされることもあります。
報恩講の服装に決まりはありますか?
お寺の報恩講に参拝する際は、落ち着いた平服(略装)が一般的です。男性は地味な色のスーツやジャケット、女性は落ち着いた色のワンピースなどが適しています。過度に華美な服装や、殺生を連想させる革製品などは避けましょう。
報恩講のお布施はどんな袋に入れますか?
お布施は、白無地の封筒や、市販のお布施用の袋に入れます。表書きには「御布施」と記入します。浄土真宗では、亡くなった方を供養する趣旨ではないため、「御霊前」や「御経料」といった表書きは使用しません。
報恩講に持っていくものは何ですか?
お寺の報恩講に参拝する際は、念珠(数珠)とお布施を持参します。また、法話を聴く際のために、メモ帳や筆記用具を持っていくと便利です。
まとめ
報恩講は、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人のご恩に感謝し、私たちが改めて仏法に出会うための最も大切な法要です。一般的な追善供養とは異なり、生きている私たちが教えを聴き、お念仏の喜びを分かち合う場として受け継がれてきました。
日程が1月と11月に分かれるのは、親鸞聖人の同じご命日を旧暦と新暦のどちらで数えるかによるものです。お布施に決まった相場はなく、迷えばお寺に尋ねて差し支えありません。お寺から案内が届いた際は、服装や持ち物を整えて、参拝に足を運んでみてください。
なお、浄土真宗には報恩講のほかにも、亡き人を偲ぶ浄土真宗のお盆や、永代経、春と秋の彼岸法要、そしてお彼岸など、さまざまな年中行事があります。それぞれの行事の意味や作法についても、別の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
西栄寺(大阪市西淀川区)では、お仏壇のお給仕や仏事の作法についてのご相談を受け付けています。ご自宅でお勤めになる際に迷われることがあれば、お声がけください。











